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名古屋不動産コラム

COLUMN

不動産事情 of NAGOYA

「リニア事業が名古屋駅西の開発に与える影響とは」
2022.3.9

 今年2月28日、名古屋駅西の観光ホテル「名鉄ニューグランドホテル」(名古屋市椿町)が閉館した。このホテルが開業したのは1985年。高度経済成長期を経た日本がバブル経済を迎えることになる年であり、主要ターミナル駅を中心に地価は高騰。名古屋駅周辺も例外ではなかった。

 このころの地価は、年率で10%を超える上昇率で、商業施設などの開発も勢いよく進んでいた時代。とはいえ、名古屋駅の開発の中心は東口であり、松坂屋、名鉄百貨店、近鉄百貨店などのデパートなどがある東口と比べ、西口(駅西)はアンダーグラウンドな印象が強かった。

 その雰囲気を変えたのが、商業施設でいえば、「生活倉庫」(現在はビックカメラ)であり、ホテルでいえば「名鉄ニューグランドホテル」だったのではないかと思う。東口、栄エリアとはまた違った様相で展開した駅西は、予備校や専門学校などの教育施設と、飲み屋がひしめく歓楽街が織り交ざり、独特な雰囲気を醸し出していた

 その後、さらに名駅再開発が進み、2000年にはJRセントラルタワーズ、2007年にはミッドランドスクエアが開業。名駅~栄間を一つの開発パッケージと考えたとき、名古屋駅西口の整備は後手に回らざるを得ないのは自明であった。

  • - 2000年 JRセントラルタワーズ 開業 -

  • - 2007年 ミッドランドスクエア開業 -

 しかし、ここ数年でその事情が大きく変わってきている。(もちろん、本当はもっと前からなのだが)。それが、「リニア中央新幹線」の開業に向けた開発である。2027年開業を目指すリニア中央新幹線事業の大きな課題は、言わずもがな路線や駅を開発するための土地、場所の手当である。一般的な都市計画による地上げでも骨が折れるが、今回のその難易度はこれまでとの比ではない。ただ、リニア開発という国家プロジェクトとなれば、その力の入れようも変わってくる。駅西は、もともと土着の方が多く、東口に比べ開発が進まなかった要因には、地上げが進捗しなかったこともあるのではないかと思う。

 リニア事業には大きな土地資源が必要であり、特に駅の開発は各商業施設の思惑も入り交じり難しさを極める。東口エリアはこの十数年で再開発が実施され、新たに開拓する資源が少ないという事実がある。そうなれば、開発余地が高い駅西に目が行くのは自然なことであり、水面下での動きが活発になっていることは想像に難しくない。

 昨今の新型コロナ感染拡大による観光事業の大打撃で、事業撤退を余儀なくされる会社も多数出てきているなかで、需要と供給が整う可能性がかなり高まった。今回の名鉄ニューグランドホテルの閉業も新型コロナ感染拡大によるものと言われているが、本当の意義は、リニア新幹線事業による駅西再編の大きな布石になったということだろう。